2015年6月23日火曜日

      Y先生の話
                                                                      H27. 6.21
     
 野球の夏の支部予選大会での話。
 初戦、初回裏の11得点を皮切りに、合計28点あげる猛攻で相手チームを退けました。試合中、いつもどおりスタンドの応援野球部員の後ろに陣取って観戦していましたが、この日も、野球部部長のY先生が部員にきめ細かな指導をしておられました。毎回の加点で勝敗の行方が見えかけたようなあたり、「ここで気持ちを緩めるなよ。しっかり声を出せ。相手チームは一生懸命戦っているんだ」と部員に檄を飛ばしておられました。日頃からの生徒指導の質、また、教育者としての資質能力の高さが伺えます。
 勝った負けたは別として、試合(試し合い)ですから、勝敗に至るまでの在り方が大切です。いわんや、子どもの心の成長を第一義とする教育に於いてはなおさらです。
 剣道部の顧問として指導にあたっていた頃、試合で明らかに技量の違う相手に突き技を出して勝って戻ってきた生徒を叱ったことがあります。僅か1パーセントの有効打突の決まり手で勝利し得意満面の表情を浮かべて戻ってきた彼をその時叱責しました。専門的な話になるのでこの紙面では割愛しますが、憤懣やるかたない表情の彼に、相手選手の心情を察するに余りある攻撃であったことを、また、勝ち方が大切であることをその後こんこんと説諭しました。
 この頃からだったからでしょうか。平素から、剣道はお互いであると事あるごとに口にするようになりました。また、自戒の言葉ともなりました。
 試合も教育もお互いです。
 Y先生はそのことを自覚して実践しておられる教員です。

2015年6月10日水曜日

この頃の野球部におもうこと

                                                                           H27. 6. 9
     
 休日の朝は、野球部の掛け声で目覚めるようにしている。正確には、自転車のブレーキ音で時間を推し測り、練習開始の発声を聞いてベッドから起き出す。個人の行動パターンによる時間の精度はかなり高く時計並みだ。校長公宅は、学校の敷地内にあり野球場に隣接し居間の正面は駐輪場なので、シーズン中の土日はこんな感じだ。
 朝食をとりながら耳を傾けると、聞こえてくる声にその日の部員たちのコンディションがわかるような気がして勝手な想像をする。強豪校の練習試合前にいつになく気合いが入っているな、大会前の練習で少し疲れが溜まっているのかな、などと、考えを巡らす。
 今年になって明らかに変化が現れた。常時耳にしているので声の質やリズムの違いがわかる。行動時間の精度も5分以内だ。素人目だが、それに呼応してきたかのようにプレーにキレがあらわれ集中力の高まりも認められて卒がない。準備や移動もきびきびしている。時に、グラウンドの空気を支配しているように感じられて頼もしく、また、見ていて清々しい。この一連のことが、普段の学生生活にも影響しているように思う。廊下を歩く様子一つにもメリハリがきいていて無駄がない。話しぶりにも変化があらわれてきている。
 そうした折、先日、地元の方からお褒めの電話をいただいた。生徒が、町中で見知らぬひとにもきちんと立ち止まって挨拶をし立派だとの旨。我校では当たり前のこの彼らの行為、ひとの心を打つのは心がこもっているからだと思う。形から入るという物言いがあるが内面の成長が現出しているものと考えたい。
 甲子園出場を果たしてから二十数年の時が経った。その栄光は大切に守りつつも、一層進化した野球部の活躍を期待したいと日頃から願っている。本校は公立高校であり、学習や特別活動、その他の教育活動の中にあって感性豊かに知性を高めバランスよく成長していかなければならない。限られた時間やルールの中で、いかに創意と工夫で練習の質を高め強くなっていくか、これからに期待したい。
 有名な部や強かった部が衰退したり勝てなくなっていくのに共通したプロセスがある。それは、身内から支援されなくなっていくということだ。存在感が大きくなり発言権も増していき、裸の王様状態となっているのを見てきた。強くなったあと、その状態を維持していくのは本当に難しい。平時にあって、意識して奢らず傲慢を戒め謙虚であらねばならない。
 メタ認知能力も指導者に要求される。昨日、「よくなってきた手応えを感じますね」と、話しかけると、顧問曰く、「まだまだです。授業中も教科の先生方に助けられています」と、謙虚にお答えいただいた。顧問をはじめ、先生方の支援と指導に期待が高まる。生徒諸君が野球部を引退した後、ただの人にしてはならない。
 もうじき夏の大会が幕を開ける。きっと、白球を追う知高野球部の溌剌としたプレーに多くの人たちが心ときめかすことだろう。
追記 挨拶を交わす時、こちらも立ち止まって正対するのが礼儀なのは重々承知なのだが、加齢のせいか蹴躓いてしまいそうになるので、どうか、ご寛恕願いたい。                                  
                               
   

2015年6月3日水曜日

平成の大教育改革?とアクティブラーニング・八っつあん熊さん

                                                      H27.6.1

八っつあん(以下、八):「世の中に蚊ほどうるさきものはなし。ぶんぶというて夜も眠れず」って知ってるだろう?
熊さん(以下、熊):それって、昔々、なんかの改革ってやつでお上がとった政に、どこの誰だかが皮肉って詠んだってやつだよな。文武両道だの質素倹約だのってやたら締め付けるんで閉口したって、確か昔の瓦版に載ってんの見たな。
八:そうよそうよ。なんか最近似たようことを耳にしたもんでな。
熊:なんだいそりゃ?いい大人になっても寺子屋通いのおめえのこった、なんかまた小難しいこと言い出すんじゃねえだろうな。
八:それがよう、「アクティブラーニング、アクティブラーニング」って、やたらお上が口にするらしいんだがさっぱりわかんねえってうちの先生がぼやいてたんだよな。
熊:なんだい、あれかい。最近流行りの伴天連言葉ってやつかい? 
八:どうも、数年後に、そのアクティブラーニングってやつが、藩校や学問所、寺子屋で
一斉に始まるらしいんっていうんだが、うちの賢い先生にしたって中身がよくわかんねえらしんだ。ただ、今までみたいに「子曰く・・」って、先生がありがたーく講義するのを聞いている訳にゃいかなくなるらしいんだな。
熊: じゃあ、直にお上にきいてみりゃいいじゃねえか。なんなら、おいらがひとっ走り番屋にでも聞きに行ってきてやろうか。
八:そうかいそうかい、そうしてもらえりゃうちの先生も安心しようってもんよ。韋駄天の熊さん、任せたぜ!
・・・・・             
八:おう、お帰り。でも、随分と時間くったじゃねえか。それになんだか冴えねえ顔しやがってどうしたんだい。首尾はどうよ?
熊:それがよう、誰に聞いてもさっぱりなんだよ。結局の所、誰もよくわかんねいらしいんだな。番屋の親分じゃちんぷんかんぷんなんで与力の旦那に聞いたんだがわかんねえ。そんでもって奉行所のお偉いさんにまで取り次いでもらったんだが、今んところわかっているのは、そのアクティブラーニングってやつが数年後に始まるから各自心得ておくように、ってえことぐらいなんだな。近頃じゃ、黒船は来るわ、隣の清国は英吉利にやられたってんでお上もうかうかしてらんねえ、異国とわたりあわなきゃなんねいから人づくりに躍起らしいんだ。それから、こうも言ってたな。今までだってまんざらやってなかった訳じゃねえからそう心配するこたあねえって。そのうち、詳しいことはお達しがあるってよ。
八:そうかい、そうかい、そりゃご苦労だったな。こっちとりゃ、なんだか皆目検討もつかねえが、まあ、頭のいいお偉いさんの考えることお上のなさるこった。こっちとらも別にケチつけようって訳じゃねえし、まあ、なんだな。ひとつお手並み拝見と決め込もうじゃねえか。寺子屋の先生にもそのうちお達しがくるだろうしよ。
熊:そうだな。それより、喉が渇いた。どうだい、これから一杯キュウッてのは?
八:いいねいいね。今日んとこは面倒掛けたな。今夜は、俺っちのおごりでい!
熊:おうっ、ゴチになるぜ。